明日の鐘

私に告白したひとには、妻子がある。
つまり相手にとって、私は浮気相手だ。

もちろん、不倫相手ではない。

ただ彼は、私のことを好きで
私は、ほかに興味をもってる異性がいない。
それだけのこと。

彼は興味深い人間だ。
私は「普通」の人に、あまり興味をもたない。
つまり彼は、変わり者だ。

彼は私に「家族を一番大切にしている」と
はっきり言ったことがある。
家庭の如何によっては
すぐにでも、私の前からいなくなるってこと。

彼に“出会う”より前は
大学の指導教官を心の支えにしていた。
指導教官は、ケータイの向こうに居る。

希望をもって進学した顛末の現実。
フランチャイズの飲食店で フリーター。
一寸先は闇。将来がまったく見えない。

そんな折、空を見上げると、
雲に隠れかかった月の光。
院生時代と今の私を、唯一つなぐことができる人物。
それが師匠だった。

不安定な安定は、そこにあった。

彼に出会って、
彼のことが少なからず意識を占めて
師匠と距離をとることができた。

そもそも、そうあるべきだった。
あくまで修了した大学の“教官”だから。

だけど…
彼にとって、私は何なのだろう。
私にとって、彼は何なのだろう。

彼が居なくなって…彼の場所を空にした世界で
私は何のために生きるのだろう。
「何のため」に、生きるのだろう。

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『明日の鐘』
by.THE ALFEE(1998)

「誰のために 生まれてきたのか」
「誰のために 時を刻むのか」

ふつうの…仲間だったらよかったのに。

恋愛感情が生まれた時点で
いつ切れるかわからない
不安定な関係になる。

彼には 妻子がいる。
私には 誰も居ない。

誰も居なけりゃ居ないで
それなりに生きていくだろうが

注がれる視線がある
そのうれしさを知ってしまったから

必ずおとずれる
関係が切れる 未来は哀しい。