花火

予約していたホテルから、花火が見えなかった。
窓が違う方角、向いていた。
外に出ると、建物が邪魔でよく見えない。

できるだけ高いビルに登ろうと思った。
けど鳥取の町は、すでに寝ていた。
…駅ですら。

花火大会会場の、千代川まで走った。

だんだんと道をゆく人が増え、
道路が臨時歩行者天国になり、
屋台が所狭しと並ぶのが見えた。

そして、大きな花火が見えた。

迷わず、いちごのカキ氷を買った。
私の中で“花火大会には氷イチゴ”という
意味不明な不文律が存在するんだ。
そして群集に溶け込んだ。

この日、この瞬間のために、花火師さんが
いろんなことを考えて、何日も何年もかけて
つくったんだろうな。

でも乱暴に言えば
成れの果ては“可燃ごみ”だよね。
キラキラ光ったあと、例外なく散っていく。
…無情だね。

人だって、生まれた瞬間“火葬場行き”が決定するよね。
ちょっと例外的な最期もあるけど
終わりは必ずやってくる。
…無情だね。

何のために、生きてるんだろう。

花火が上がるとき、花開くとき
最後のきらめきを残すとき
何万人もの人が、その姿を眺めている。
それぞれの気持ちを抱いて。

人も生きていると必ず、人に出会って
たとえ行きずりの、一生に一瞬しか出会わない人でも
気持ちの交流をもつ。

花火は美しく咲いて、何万人もの人を楽しませる。
人は生きて、何らかの気持ちを与え合う。

無情なようで、ドラマティックな人生がある。
一期一会…
簡単なようで、難しい。